人体がL-アミノ酸だけを使う理由は、簡単に分かる

索引

  1. アミノ酸分子の左手と右手の深い謎
  2. 一分子生命ビッグバン説で簡単に説明できます
  3. 人体がD-アミノ酸を使わない理由
  4. 左手アミノ酸が宇宙から来た説がおかしい理由

アミノ酸分子の左手と右手の深い謎

アミノ酸はタンパク質を作るための材料であり、多数のアミノ酸が結合してタンパク質が形成されます。

このアミノ酸の分子には、「L体(左型)」と「D体(右型)」があることが知られています。

人間の手に右手と左手があるように、アミノ酸にも左手に対応するものと、右手に対応するものがある、というわけです。

アミノ酸分子のL体とD体との違いは分子の構造のみにあります。アミノ酸分子のL体とD体とは、鏡に映したときに現れる、いわゆる「鏡像体」の関係にあります。

アミノ酸分子のL体を鏡に映すと、その鏡の中に現れる虚像がアミノ酸分子のD体に完全に一致します。この逆もまた成り立ちます。

一つのアミノ酸分子のL体は、どのように裏返したり回転させたりしても、アミノ酸分子のD体に重ね合わせることはできません。それはちょうど、右手用の野球グローブと左手用の野球グローブとの関係に似ています。

一種類のアミノ酸分子のL体とD体との物理的性質は、偏光を右に曲げるか左に曲げるかの違いだけで、それ以外に違いは全くありません。

両者の性質は、他の分子と反応するスピードも、分解する温度、時間も、何もかも同じです。

一種類のアミノ酸分子の場合、左手に対応するものであっても右手に対応するものであっても、そのアミノ酸分子を構成する原子の種類も、数も、重さも完全に一致しているわけですから、左手と右手との物理的性質が完全一致していても、何ら疑問はないと思います。

・・・ところが、この「物理的性質が完全一致している」、というところが今回のキーポイントです。

人体は、アミノ酸のうちL体のみによって構成されているからです。

アミノ酸に左手と右手があるとした場合、なぜか人体は左手のアミノ酸「だけ」からできているのです。

おかしいと思いませんか。

人体のうち、「左手のアミノ酸の割合が大きい」、というのであれば、まだ分からないでもありません。

けれども「右手のアミノ酸と左手のアミノ酸が確率論的にばらばらに混合しあった部分は人体には存在しない」のです。

また事実はこれだけではありません。

人体だけではなく、「地球上のあらゆる生命体」が左手のアミノ酸だけでできています。

もちろん、ある種のアミノ酸は交互にL体とD体に変換できるものがあります。このため、「後から」右手のアミノ酸に変化するものはあります。また人体のごく一部にD体のアミノ酸が使われていることも近年の研究で判明してきています。

ところが人体でD体が使われるのは例外と言われるほど少なく、かつD体が使われるといっても「ユニット単位」でD体がまとまって使われています。

最新の研究によってもやはり右手のアミノ酸を使った事例と、左手のアミノ酸を使った事例が、ランダムに確率論的に現れることは確認されていないのです。

どうして地球上の生命体は事実上、左手のアミノ酸だけを選択して、それを使ってなりたっているのか。

これまで人体がL-アミノ酸だけを使う理由は謎であるとされてきました。

一分子生命ビッグバン説で簡単に説明できます

人体がL-アミノ酸だけを使って形成されている理由は、一分子生命ビッグバン説で簡単に説明できます。

人体がL-アミノ酸だけを使って形成されている理由は、地球上のあらゆる生命体が、最初に登場したたった一つの分子(一系列とか、一系統かとかの意味ではなく、文字通り「たったひとつの分子」)から進化したからです。

地球上に最初に生命が誕生した時、同時多発的に生命は誕生したとあなたは考えますか?

ところが事実は少し違います。

地球上に最初に生命が誕生したのは、自己を複製できる、たった一つの分子が地球上に誕生したときです。

このたった一つの分子が自己を複製するのに必要としたのが、左手のアミノ酸であった、というわけです。

以降は連鎖的に左手のアミノ酸を使うようになったことから、地球上の生命体は左手だけを使うようになりました。

これまで地球上に誕生したあらゆる生命体は、この最初に誕生した、「たった一つの分子」の形質を受け継いでいるので、地球上に誕生したあらゆる生命体は、左手のアミノ酸だけで形成されているのです。

人体がD-アミノ酸を使わない理由

人体がD-アミノ酸を使わないで形成されている理由も、地球上のあらゆる生命体が、最初に登場したたった一つの分子から進化したとする「一分子生命ビッグバン説」により簡単に説明することができます。

地球上に最初に生命が誕生した時の生命であるたった一個の最初の分子は、自己を複製することができました。

このたった一個の最初の分子が最初に使用するアミノ酸は、当然ですが、「L体(左型)」でも「D体(右型)」でもよかった。

これが事実です。

たまたま、たった一個の最初の分子が左に傾いて手をついた場所に左手のアミノ酸があった。その左手のアミノ酸を使って、自己を複製した。

だから、現在観測できる全ての生物は左手のアミノ酸だけでできています。最初に誕生した一分子によって、それ以降の生命体は複製され続けたからです。

逆にたまたま、たった一個の最初の分子が右に傾いて手をついた場所に右手のアミノ酸があったとしたら、その右手のアミノ酸を使って、自己を複製したことでしょう。

この場合は、現在観測できる全ての生物は右手のアミノ酸だけでできていた結果になったことでしょう。

つまり、地球上に最初に誕生した、自己を複製する能力を持つたった一つの分子が選んだのが「L体(左型)」であって、左手が選ばれる確率は1/2であった。

人体がL-アミノ酸だけを使う理由や、人体がD-アミノ酸を使わない理由についてあれこれ悩む理由は一切ありません。

たまたま地球上に最初に誕生した、たった一個の最初の分子が自己を複製した場面に立ち会うことができたとすれば、偶然によって左手のアミノ酸が選ばれたことを確認することができることでしょう。

左手アミノ酸が宇宙から来た説がおかしい理由

1980年代に提唱された「ボナー仮説」によれば、左手のアミノ酸は宇宙から運ばれてきたことになっています。


「宇宙では隕石やすい星の表面にアミノ酸のL体とD体が半々の割合で存在していたが,中性子星(中性子でできた超高密度の星)が出す特殊な光『円偏光』を浴びてL体だけになり,約四十億年前の地球に降り注いだ」

米スタンフォード大 W. ボナー博士

ところがこの説には大きな欠陥があると私は考えます。

(1)左手アミノ酸宇宙飛来説の純度問題

仮に隕石やすい星の表面にアミノ酸が存在していたとして、それが外部環境の影響によりL体だけになるメカニズムが不明であることが問題点としてあげられます。

外部環境の影響により、アミノ酸のL体とD体の混合比のバランスが崩れることは百歩譲ってあったとしても、本当に100%のアミノ酸のL体は生成するものでしょうか。

(2)左手アミノ酸宇宙飛来説の地球突入時の分解問題

地球外部から運ばれるアミノ酸は宇宙空間における外部環境の影響を受けて変化したのですから、地球にきたアミノ酸は隕石とかすい星の表面にあって、外部環境の影響を受けやすい位置に存在していたはずです。

この場合、古代地球にも(酸素のない時代はありましたが)大気は存在していましたので、隕石等の地球大気圏突入時にアミノ酸は燃え尽きてしまいます。

隕石が燃え尽きてしまう温度に、アミノ酸が耐えられるはずがありません。

(3)左手アミノ酸宇宙飛来説のアミノ酸汚染問題

また隕石等の形で地球に突入したのではなく、彗星のチリとして地球上に大量に降り注いだという考え方もあると思います。

けれども、宇宙から降り注いでくる純粋なアミノ酸よりも、地球上で作られるアミノ酸の方が地球上生命体にとって使いやすいです。

宇宙から降り注いでくるアミノ酸は広く地球上の各地に拡散してしまい、まとまった量を一カ所で生命体が利用することは簡単ではないからです。

ボナー仮説によれば地球上では純粋なL体のアミノ酸は生成されないことを前提にしています。宇宙から降り注いだL体アミノ酸に対する、地球上にもともとあるD体のアミノ酸による汚染をどのようなメカニズムで防ぐことができたかについてもボナー仮説では説明することが困難です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

Written by

日本弁理士会所属。ファーイースト国際特許事務所のオーナー弁理士。商標出願件数8年連続・上位5位以内のたった一つの特許事務所。大阪大学大学院理学研究科修了。フジテレビ(とくダネ!)、テレビ東京(WBS)等出演多数。著書「社長、商標登録はお済みですか?」(ダイヤモンド社)も好評発売中。

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