生命の起源を宇宙に求めるのは止めませんか

索引

  1. 地球生命の宇宙由来説は誤り
  2. なぜ生命宇宙飛来説を唱える人がでてきたのか
  3. 生命の由来を宇宙に求める理由がない

地球生命の宇宙由来説は誤り

地球で初めて生命が誕生したのは今から約40億年前ですが、地球における生命発祥は宇宙からきた生命により生じたとの説を唱える学者が後を絶ちません。

強く警告しておきますが、この生命宇宙飛来説はそう遠くない将来に一掃されると思います。

地球上でどのように生命が最初に誕生したのかよく分からない。どれだけ調べても分からない。

だから、生命はきっと宇宙からきたのだろう。

これがおそらく生命が宇宙から地球に飛来したと主張する方の基本骨格でしょう。

地球外からきた隕石が地球のあちらこちらで発見されていて、その隕石の中にアミノ酸などの有機物が発見されたこともあるので、きっと生命の基となるものは宇宙から飛んできたのだろう、ということでしょうか。

けれどもこれは問題のすり替えです。

地球で生命が誕生したメカニズムが不明なのは、宇宙から生命がきたから。なるほどもっともらしい論説ですが、ではその生命の基となるものは、どうやって誕生したのか説明できません。

なぜなら生命宇宙飛来説は、問題の本質を右から左にスライドさせただけだからです。

宇宙から飛来した生命があるというなら、どうやってその生命が誕生したのか。最低限、その道筋が分かるようにして説明してもらいたいものです。

地球で生命が誕生したプロセスが分からないので、生命は宇宙からきたことにして、臭い物にふたをした、との印象を生命宇宙飛来説の説明を聞いた時に拭い去ることができません。

特に分子生物科学に携わる関係者の方は、安易に生命宇宙飛来説を披露しないようにお願いします。後で大恥をかく、というのが私の読みです。

なぜ生命宇宙飛来説を唱える人がでてきたのか

生命の材料となるものが地球外からきた、という話なら分からないでもありません。

けれども生命そのものが地球外からきた、という説は正直よくわかりません。

なおここでは生命とは、自己を複製することのできる有機物とします。

ただ有機物のように炭素、水素、窒素等の原子だけで構成されているものを生命と認めることに抵抗がある人もいると思います。

ただ、地球で誕生した生命は、宇宙から飛来したとすれば相当単純な構造をしていたと予測できます。

というのは宇宙空間では宇宙線を遮るものがなく、恒星のそばを通るときは日向の部分と日影の部分との間でも有機物に酷なほど温度変化があります。

宇宙線の影響や温度変化の影響で、生命の基となる有機物は高次構造を維持することができないのではないか、と考えられるからです。

仮に宇宙からきた生命により地球の生命が育った、とします。でもなぜ、生命の由来を地球外に求めなくてはならないか、これが私には正直分かりません。

生命は地球で生まれれば足りるので、わざわざ宇宙からの由来を仮定する必要がないように思われます。

なぜ生命宇宙飛来説が根強く支持されているかというと、これまで地球の生命には常識では考えられない不思議な特徴があるからです。

生命宇宙飛来説では、地球の生命体のアミノ酸がL体に限定される理由を説明できない

一つは、全ての生命体のタンパク質を作るアミノ酸がL体だけに限定されている点です。

もちろん、生命体の中にはD体のアミノ酸で構成されている部分も見つかっていますが、D体のアミノ酸のみか、もしくはD体のアミノ酸のみからできているタンパク質のみを供給されて生命を維持できる生命体は地球上にいますか?

もしいる、という人がいるのであれば、私と勝負しましょう。

私はその生命体にL体のアミノ酸のみか、もしくはL体のアミノ酸のみからできているタンパク質のみを摂取させます(もちろんその生命体が体内で合成できない必須アミノ酸を使って、です)。

あなたはその生命体にD体のアミノ酸のみか、もしくはD体のアミノ酸のみからできているタンパク質のみを摂取させます。

勝負がつくまでにそんなに時間は掛からないと思います。違いますか?

これまで全ての生命体のタンパク質を作るアミノ酸がL体だけに限定されている点を統合的に万人が納得できる形で提示した人はいなかったと思います。

一分子生命ビッグバン説はこの点をきれいに説明します。

地球上の生命は、地球上にあった、自己を複製できるたった一つの光学活性を持つ有機分子から進化した。

これが一分子生命ビッグバン説です。

たった一つだから、その有機分子の光学活性体はD体かL体かいずれか一方に必然的に決まります。

たった一つだから、いずれか一方に決まるのです。

もし生命誕生に関与した光学活性を持つ有機分子が二個以上あったとしたら、確率論的にD体由来の生命体とL体由来の生命体の二種が発生したはずです。

ところがそんな事実は一切観測されていません。

一分子生命ビッグバン説に立てば、地球上にいる生物すべてのアミノ酸がL体のアミノ酸のみで形成されていても不思議でもなんでもありません。

地球上に生じた、自己を複製できる光学活性有機物が、現在のL体のアミノ酸につながる光学活性であった、というだけのことです。

わざわざ生命宇宙飛来説を唱えるまでもありません(唱えたとしても問題は解決しません)。

生命宇宙飛来説では、地球上の生命体の複製システムがDNAだけに依存する点を説明できない

次の一つは、全ての地球上の生命体が採用する自己複製システムがDNA(デオキシリボ核酸)を介している、という点です。

通常であれば、地球上の生命体の自己複製システムは、別にDNAを介するものに限定される理由がないように思われます。

DNAが宇宙から飛来したから、地球の生命体は全てDNAを介して自己複製をしている、と主張するのが生命宇宙飛来説の立場であるとするなら、それはおかしいと思います。

宇宙から飛来しようがしまいが、「自己複製のメカニズムがDNA由来に限定される」理由について、生命宇宙飛来説は何も新たな考え方を提供していないからです。

一分子生命ビッグバン説に立てば、地球上にいる生物すべての自己複製がDNAを介してされていても不思議でもなんでもありません。

たった一つの自己複製可能な光学活性有機化合物分子から地球上の生命が進化したとすれば、地球上の生命体がたった一つのDNAシステムで自己を複製したことは当然といえば当然といえます。

元が一種類なので、その一種類に対応するシステムは一種類で足りるからです。

ちなみに核酸塩基が地球外で発見されたことを認めたとしても、その事実と生命が宇宙から飛来した事実との間には何のつながりもないように思われます。

仮に「宇宙に炭素、水素、酸素、窒素等の原子が存在するから、地球の生命は宇宙からきたのだ」、と主張する人がいたとしたら、その人に対して「それは間違っている」とあなたはきっというでしょう。

生命を構成するための材料が地球外にあったとしても、生命が宇宙からきた決め手にはならないです。

なぜみんなが核酸塩基が地球外で発見されたから生命は宇宙から飛来した、と主張する人に向かって、「それは間違っている」、と言わないのか私は不思議に思っています。

生命宇宙飛来説では、自己複製に必要なDNAの二重螺旋が右巻きに限定される理由を説明できない

次の一つは、全ての地球上の生命体が採用する自己複製システムのDNAの二重らせんが右巻であるという点です。

もちろん左巻DNAもありますが、自己複製に決定的に関与するDNAは右巻きです。

これまで自己複製に決定的に関与するDNAが右巻きである理由は誰も簡単に説明することができませんでした。

一分子生命ビッグバン説に立てば、地球上にいる生物すべてのDNAが右巻きであっても不思議でもなんでもありません。

元が一種類なので、その一種類に対応するDNAが右巻きであった、というだけのことです。

生命の由来を宇宙に求める理由がない

地球上の生命体のアミノ酸がL体であること、DNAのみにより自己複製が行われること、自己複製に関与するDNAが右巻きだけであることを統合的に説明することがこれまでできませんでした。

だから苦しくなった科学者たちは、よく分からない原因は、宇宙からやってきたからだ、といって、ほぼ全員が思考を停止してしまいました。

どこかよく分からないところからきたのだからよく分からなくて当然、といった姿勢でしょうか。

論理的に考える科学の世界において、分子生物学の分野が一番発展が遅れていると私は思います。この責任は、これまで論理的にものごとを考えることを放棄してきた科学者たちにあります。

一分子生命ビッグバン説に立てば、欠陥だらけの生命宇宙飛来説に頼らなくてもよいのです。

いかがですか。違いますか?

自身の論文で生命が宇宙から飛来したとの点に言及した科学者は、話が大きくなる前に、論文を訂正しておくことをお薦めします。

分子生物学に関係する科学者は、基本に帰って物事の本質を勉強するように努めてもらいたいものです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

この2020年の令和の時代に、昭和の枯れた理論をおしげもなく投入してくるとは、なかなかチャレンジングな試みですネ。

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