進化のための生命誕生テンプレート

初めに

現存する生物のタンパク質は、「L体(左型)」アミノ酸分子を使って構成されています。数学的な確率からすると、「L体(左型)」を使用するか、または「D体(右型)」を使用するかは、1:1の割合で決まるように直感では思えます。

しかし地球上の生物は「L体(左型)」アミノ酸分子がなければ生命を維持することができません。どうしてここまで地球上の生命体は二種類あるはずの成分のうち、一方のみに頼っているのか。

この説に答えるためには大きく二つの考え方があります。

索引

  1. 進化の過程で「L体(左型)」アミノ酸分子を使用するテンプレートは存在したとする説
  2. 進化の過程で「L体(左型)」アミノ酸分子を使用するテンプレートは存在しなかったとする説

(1)進化の過程で「L体(左型)」アミノ酸分子を使用するテンプレートは存在したとする説

一つ目の考え方は、地球上の生物が「L体(左型)」アミノ酸分子のみを使用するためのテンプレートが実在していた、と考える説です。

地球上の生命体が、アミノ酸分子について二種類ある「L体(左型)」と「D体(右型)」の光学活性体のうち、一方の「L体(左型)」のみを使うためには、進化の過程のどこかの段階で、「L体(左型)」のみを選別して使用する何らかのシステムが必要になります。

もしアミノ酸分子のうち、「L体(左型)」のみを選別して使用する何らかのシステムが存在しなければ、地球上に誕生した生物には、「L体(左型)」のアミノ酸分子以外に、「D体(右型)」のアミノ酸が混入した可能性を排除できないからです。

自然界にあるアミノ酸のうち、「L体(左型)」のみを選別して使用する何らかのシステムに使われるものを、テンプレートと呼ぶことにします。

このテンプレートには、二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別して生命体に供給する役割とか、あるいは、二種類あるはずのアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別して産生して供給する役割とかがあるはずです。

このテンプレートが備える機能を発現する上で、欠かせない要素があります。その要素は、「光学活性体のうち一方を分離する能力」または「光学活性体のうち一方を区別する能力」です。

このテンプレートは、アミノ酸分子の二種類ある光学活性体のうち、「L体(左型)」のみを供給できるのですから、何らかの形で光学活性体のうち一方を分離または区別できるはずです。

このテンプレートは間違うことなくこちらに、「はい、L体(左型)アミノ酸分子ですよ。」といってこちらにL体(左型)アミノ酸分子のみを届けてくるのです。

仮にそんなテンプレートが実在したと仮定しましょう。

自然界にあるアミノ酸を分離するか、または、新たにアミノ酸を合成することにより、L体(左型)アミノ酸分子のみをこちらに届けてくれるテンプレートのことをA型テンプレートとしましょう。

ところがA型テンプレートの実在を仮定すると問題が生じます。

というのは、A型テンプレートを鏡に写した虚像として、B型テンプレートという恐るべきテンプレートが存在することになるからです。

A型テンプレートとB型テンプレートは、一方の実在の構造と、その実在の構造を鏡に映した構造とのそれぞれの関係に対応するものになっています。

つまり、一方のテンプレートが生成すれば、全く同じ過程を経て、もう一方のテンプレートが生成することになるのです。

つまり、一方のテンプレートの存在を仮定すると、他方のテンプレートの存在を排除できなくなるのです。

この点が、なぜ、地球上の生命体が二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを厳密に使用していることを説明できない理由です。

A型テンプレートとB型テンプレートの二種類のテンプレートが存在したとすると、地球上の生命体が二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを使う理由がなくなるからです。

この21世紀の時代になってもなお、多くの生物学者たちは思考停止してこの問題から目を背けようとしています。

テンプレートの存在を仮定すると、そのテンプレートを生み出すテンプレートが必要になり、問題はいつまでたっても解決しません。

一言でいってしまえば、この迷路でぐるぐる回っているのが現在の科学界の現状ではないでしょうか。

(2)進化の過程で「L体(左型)」アミノ酸分子を使用するテンプレートは存在しなかったとする説

これに対し、一分子生命ビッグバン説では、二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別提供できるテンプレートなど、初めから存在しなかった、と考えます(注:ここでいうテンプレートは、アミノ酸が産生された後に、片側の光学活性体を選別するためのテンプレートです。アミノ酸そのものを産生するテンプレートはまた別に説明します。)。

二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別提供できるテンプレートの存在を仮定するから、現状の地球上の生命体系を説明できなくなるのです。

こんなテンプレート説は、ばっさり切り捨ててしまいましょう。

テンプレート説を支えているのは、地球上の生物は、二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別して使用しているのだから、どこかに光学活性体を区別できるテンプレートがあるはずだ、という一種の思い込み、先入観です。

でもその先入観は間違っています。

テンプレート説に立つと、先に説明したA型テンプレートの他に、B型テンプレートが混入してくる可能性を排除できないからです。

二種類あるアミノ酸分子の光学活性体のうち、一方のみを選別提供できるテンプレート等は「最初からなかった」というアイデアに辿り着くと、もっと全体像をシンプルに説明することができます。

アインシュタインが、それまで有力な説の一つであった、宇宙をエーテルという媒体が満たしている、という考えを捨てたのと似ています。

生命発生に必要であったとされるテンプレートを捨ててしまうのです。

テンプレートがなくても、地球上に最初に誕生した、たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子さえ誕生することができれば、以降は、その光学活性体の性質を引きついだ分子がどんどん産生されることになります。

たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子は、必ず「L体(左型)」か「D体(右型)」かのいずれか一方の性質を持っています。

ちなみに、「L体(左型)」であるか、あるいは「D体(右型)」であるかの可能性については、1:1の割合で等しいです。

たまたま地球上に最初に誕生した、たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子が「L体(左型)」の性質を持っていたから、以降に続く生命の全てはアミノ酸分子について二種類ある「L体(左型)」と「D体(右型)」の光学活性体のうち、一方の「L体(左型)」のみを使うことになったのです。

反対に、たまたま「D体(右型)」のアミノ酸分子を使ったなら、この逆の結果になったことでしょう。

最初の一回のみが偶然であって、以降に続く二回目以降の複製については全て必然となります。いけいけどんどん、で複製に次ぐ複製により、「L体(左型)」アミノ酸分子につながる構造が大量生産されたことでしょう。

たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子から地球上の全ての生物が進化したと考えると、光学活性を持つテンプレートの存在を仮定する必要は一切ありません。

現在我々が住む宇宙が、138億年前に一つの点からビッグバンで始まったように、現在我々が住む地球も、40億年前に、たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子を起点として一分子生命ビッグバンにより生命の進化は始まったのです。

なお、一分子生命ビッグバンの引き金になった、たった一つの、自己を複製することのできる光学活性体分子が、光学活性体である理由も必然です。

これはタンパク質の高次構造のところに話が及んだ時に、説明したいと思います。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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