DNA分子の二重螺旋が右巻きである理由

索引

  1. なぜ地球上の生物のDNAは右巻きなのか
  2. L型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しない理由

なぜ地球上の生物のDNAは右巻きなのか

DNAは二重螺旋(にじゅうらせん)により形成されています。二重螺旋には右巻きのらせんと左巻のらせんがあります。

DNA 二重らせん構造は、1953年にジェームズ・ワトソン(James Watson)とフランシス・クリック(Francis Crick)によって提唱されました。ワトソンとクリックによるDNA二重螺旋構造は、「右巻き」であるというのです。

地球上の全ての生命体の自己複製に必要なDNAは全て右巻きです。実際には左巻のDNAも存在しますので誤解しやすいです。しかし、L型のデオキシリボースを持つDNAは自然界に存在しないといってもよく、やはり「自己複製に必要な」DNAは全て右巻きといっても過言ではありません。

数学上の確率論に従えば、DNA 二重らせん構造が右巻きか左巻きかは、50%対50%同士になるはずです。ですので自然界にある生物からDNAを採取して調べると、右巻きか左巻きかは五分五分のはずです。

ところが現実にはDNA 二重らせん構造は右巻きである、というのです。ちょっと信じがたい結果ですね。

ここでDNA 二重らせん構造が右巻きである理由は、一分子生命ビッグバン仮説を受け入れるだけで簡単に説明することができます。

ちなみに「一分子生命ビッグバン(Bigbang of Life from One Molecule )」とは、地球上のあらゆる生命体が、地球に最初に登場した、自己複製に直接関与する光学活性体である、たった一つの分子から進化したとする一つの仮説です。

事実上、自己複製に直接関与するDNAの二重螺旋に右巻きのものしか存在しないのは、地球上の全ての生命体が、たった一つの自己を複製できる光学活性な分子を起点として進化したため、このたった一つの分子の同じ性質を引き継いでいるからです。

L型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しない理由

DNAの二重らせんが右巻きになるか、左巻きになるのかは、DNAを構成する構成要素に依存します。

DNAは核酸塩基、デオキシリボースおよびリン酸からできています。このうち、右手と左手の関係にある異なるタイプを決定する構成要素はデオキシリボースです。

現在の地球上の生命体は、D型(右巻き)のデオキシリボースに完全に依存しています。

ちょっと考えれば分かる通り、生命体に採用されるデオキシリボースがD型(右巻き)かL型(左巻き)かは確率論的に五分五分のはずですから、現在の地球上の生命体は、D型(右巻き)のデオキシリボースに依存している現実には、大きな偏りがあることが分かります。

進化の過程で生命体が自己を複製するシステムとしてDNAを採用した時点以前に、強力にD型(右巻き)のデオキシリボースのみを選択するシステムを生命体は持っていた、といわざるをえません。

一つの考え方は、L型(左巻き)のデオキシリボースを強力に排除するシステムを地球上の原初生命体が持っていた、とするものです。

この考え方には難点があります。というのは、L型(左巻き)のデオキシリボースもD型(右巻き)のデオキシリボースも、偏光に対する屈折の性質のみが異なるだけで、それ以外の物理的性質は完全に一致するからです。

つまりL型(左巻き)のデオキシリボースもD型(右巻き)のデオキシリボースも等価であり、単純な物理的な方法では両者を分離することはできません。

仮に地球上の原初生命体がL型(左巻き)のデオキシリボースとD型(右巻き)のデオキシリボースとを区別して選択する機能を身につけていなかったとすれば、それぞれを使用して自己を複製したことになります。両者を区別することができないと仮定したからです。

この場合、現在の自然界ではL型(左巻き)のデオキシリボースを使用したDNAが検出されるか、もしくは過去において存在した痕跡がどこかで見つかるはずです。ところが実際には何も見つかっていないです。

そうすると、進化の過程でD型(右巻き)のデオキシリボースのみが選択され、L型(左巻き)のデオキシリボースが選択されなかったのは、進化の過程における最初から最後まで、L型(左巻き)のデオキシリボースが入り込む余地がなかったと考えるのが自然です。

仮に進化の過程でL型(左巻き)のデオキシリボースが入り込む余地があったとすると、現時点において、一定割合で右巻きのDNAの二重らせんと、左巻きのDNAの二重らせんが存在するはずだからです。ところが事実はちがいます。自己複製に直接関与するL型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しないのです。

上記の事実を勘案すると、地球上の生命体は相当早い段階で、一方の光学活性体を使用することが決定されたことが分かります。

一方の光学活性体を使用することが決定された時期はいつか。

それは簡単で、自己を複製することのできる最初のたった一つの分子が、自己を複製するときに採用したたった一個の光学活性体が、D型(右巻き)のデオキシリボースにつながる光学活性体であった、ということです。

地球上で最初に自己複製が行われた、その一回の機会のみによって、地球上の全ての生命体に対して、左手か右手かのいずれかの光学活性体が使用されるかどうかが決定されました。

最初の一回の時には、別に左手を選択しても、右手を選択してもよかった。どちらを選択するかは全くの偶然でした。

ところが最初に一回左手を選択してしまうと、以降の複製の際には最初に選択した左手のものを使ってしか自己を複製出来ません。

なぜなら、右手のものを使って自己を複製すると、左手を使った自己とは最終形態が同じになりませんので、自己を複製することにはならないからです。

つまり最初の一回だけが偶然の選択であって、それ以降、地球上における二回目以降の自己複製の際には、どちらの光学活性体を選択するかは必然になった。

「偶然」の自然選択が、それ以降の地球上の生命の形質を決定する「必然」に転換した瞬間です。

L型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しない理由は、もうお分かりですね。

L型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しない理由は、地球上の全ての生命体が、たった一つの自己を複製できる分子を起点として進化したため、このたった一つの分子の同じ性質を引き継いでいるからです。

たった一つの分子に着せる服は、たった一種類で足りる。それだけのことです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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10 Responses

  1. アバター 大山宏 より:

    右巻きのDNAしか存在しない理由としてのお説を拝見しました。最初の生命体がそれを選んだから、とのことですね。
    もう一つの可能性が実はあるのです。実は、左巻きは時間を節約できる回転方向であり、右巻きは進化していく(前に進んで行く:時間が進む)という回転方向らしいのです。例えば小学校の運動会では、左巻き方向にトラックを走ります。何故かというと右巻きに走るとトラックを飛び出していって怪我する可能性が大きいのです。他、プロのスケーターも高得点の回転方向は皆、左巻きで時間を節約すべく左回転しているでしょ。生命体が活動する(進化・成長)していくためには、右巻きの方が有利らしい、と思われるふしがありそうです。50%、50%ではない模様です。人造で作る場合には生命現象(生きるという意志)とは関係ないので、50%、50%、でしょうが、生命現象ですから、DNAは右巻きを選ぶ(進化・前進)方向を自然の内に選ぶのではないでしょうか。
    参考になれば幸いです。

  2. アバター fareastpatent より:

    なるほど、右巻きと左巻きのDNAは、実は等価ではない、との立場を採られているのですね。もし等価でなければ、おっしゃる点の可能性がありますね。
    螺旋構造の右巻きと左巻きとの等価性については、別のページで今後解説する予定です。

  3. アバター 戸矢 隆 より:

    地球の自転と公転は関係ないですか?

    • アバター fareastpatent より:

      DNA分子の二重螺旋が右巻きか左巻きかの理由に、地球の自転と公転は関係ないです。
      地球の自転と公転が関係するなら、右巻きと左巻きのDNAがそれぞれ存在して正常に機能したことになります。
      そうすれば、その痕跡が、必ず現在でも発見できるはずです。
      (生命が絶滅寸前まで追い詰められたとしても、やはり50:50からのスタートになります)
      現時点で、左巻きのDNAのみを持つ生命体が自己複製をしている事実が観測できない、というのが証拠です。

  4. アバター 鈴木 より:

    ちょっと怖い話ですが、もし普通のDNAをほどいて人工的に左巻きの二重螺旋に組み直した場合、その遺伝子を元に生命は正常に産まれると考えますか?またその産まれた生命の細胞はすべて左巻きのDNAを持ってるのでしょうか?右巻きと左巻きのDNAに機能的に差が無いのならそういう事になると思うのですが。

    • アバター fareastpatent より:

      鈴木さん、コメントありがとうございます。左巻きのDNAを人間等の生物の細胞に組み込んでも、正常に機能しないです。
      現行のDNA支援システムは右巻きを前提に組まれているので、DNA以外の支援構成パーツの全てを変更しないと動かないです。

      こちらの世界の生物や機械など以外に動くものがあります。具体的にはこちらの世界の実在物を写した鏡の中の世界にあるものを忠実に再現したものです。これも動きます。
      ただし、鏡の中の世界の生物は、こちら側の世界では生きていくことができません。こちら側の世界の栄養物を代謝することができないからです。

  5. アバター 鈴木 より:

    お返事ありがとうございます。
    化合物の中にはエナンチオマー(鏡像異性体とか光学異性体とか呼ばれる)が有りその化合物は左右で性質が違ってしまいます。DNA支援システムには片方のエナンチオマーが不可欠であるためDNAの右巻きはこちらの世界では必然である可能性が高いと思うのです。つまりDNA支援システムのエナンチオマーに右巻きの理由が有るんだと思います。
    本文の中の光学活性体とは具体的に何を指してるんですか?またそれは一度決定されれば遺伝子異常などでも左巻きの光学活性体とは置換しないほどの堅牢性が有るのですか?
    右に心臓がある人がいるように遺伝子異常は稀に起きる事で、左巻きDNAの生物が全く発見されないのは必然性が有るはずです。

    • アバター fareastpatent より:

      仮にDNA支援システムのエナンチオマーに右巻きの理由があったとしても、それは右巻きのDNAに最適化されているだけの話だと思います。
      反対に、左巻きのDNAがうまく機能する世界(ここでは鏡の世界といいます)では、逆にDNA支援システムのエナンチオマーに左巻きの理由が有ることになります。

      L型のデオキシリボースを持つDNAが自然界に存在しない理由は、地球上の全ての生命体が、たった一つの自己を複製できる分子を起点として進化したため、このたった一つの分子の同じ性質を引き継いでいるからです。

      生命発生のスタート時点で設定しないと、個別の個体で、数十兆個ある体内の細胞の全てのDNAを一気に反転させるのは不可能であると私は思っています。

      あと、堅牢かと聞かれると、めちゃくちゃ堅牢です。生命発生から40億年を経ても、びくともしないわけですから。

  6. アバター 鈴木 より:

    面倒くさい質問に付き合ってくださってありがとうございます。自分は専門家でも無いので議論はこれくらいにしたいと思います。最後に確認したいのですが、
    起点とされる分子(光学活性体)はまだ特定されていない、ということですか?
    また、生物の細胞内にたくさん存在するDNAの中で左巻きの物は一つも発見されてない、という事ですか?

    • アバター fareastpatent より:

      こちらこそ、興味をもってもらって光栄です。
      起点となる光学活性体の一分子から地球の生命体の進化が始まったと仮定すれば、全てうまく説明できるよね、というのが、一分子生命ビッグバン仮説です。
      その一分子が特定されているわけではないです。

      また左巻きDNAは存在します。ただ、「自己複製に直接関与する」DNAは右巻きです。

      あと、左巻きDNAのみを体内にもち、左巻きDNAのみで自己複製している生物は地球上にはいないです。
      これが一分子生命ビッグバン仮説による「予測」です。

      私の予測を覆すのは、たった一つの実証例を示すだけで足ります。
      でも、今まで、その実証例を私に突きつけた人は存在しないです。

      なぜでしょうね? 簡単にひっくり返りそうに思えるのですが。

      この「簡単にひっくり返りそう」、という感覚が、
      一分子生命ビッグバン仮説が支持されない最大の理由だと、私は思っているのですが。

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